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* 【創作】「オーシャンメモリー」SS ぼくのうみびらき

日時: 2016/07/02(土) 18:32:31 メンテ
名前: 天外

港町シーリンクに住む少年「ぼく」とディーヴァリンクのお姉さんの話です
 
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* Re: 【創作】「オーシャンメモリー」SS ぼくのうみびらき ( No.1 )
日時: 2016/07/02(土) 18:34:54 メンテ
名前: 天外

今、ぼくの町は、海開きのまっただ中だ。
港通りにはずらりとお店がならんで、めずらしいものがたくさんみつかる。
いろんな場所から多くの人が、ぼくの町にやってくる。

けれど、ぼくはちっともたのしくない。

友達はみんな海に遊びにいってしまった。
砂浜で、おいしいものを食べたり。海で泳いだり。
そう、ぼくは泳げないから、みんなといっしょに遊べないんだ・・・。
ぼくは悲しくなった。

ぼくは今、ひみつの場所にいる。
ぼくしか知らない、きれいな貝がらがたくさんある浜。
こういうのを「ぷらいべーとびーち」って言うのかな?

ここなら、失敗しても誰にも馬鹿にされないから。
ぼくは、泳ぐ練習をするため、海にむかって歩き出した。
ゆっくりと、陸からはなれていく、冷たい海水が、ぼくの胸をしめつけた。
そろそろ足がつかなくなる。ぼくは、大きく息をすいこみ、顔を水につける。
そのまま、足を砂からはなして。

失敗した。

ぼくの足がつかなくなったとたん、とっても、怖くなった。
怖くて、とっても怖くて、身体がうまく動かない。
どうにかしようと、手足をふりまわしても、そこには水しかない。
塩辛い水が口の中に入り込んでくる。
たすけて! 叫びたくても、ぶくぶくと泡が浮かぶだけだ。
それに、ここはひみつの場所だ。ぼくしか知らない。
馬鹿にされてもいいから、みんなのいるところで練習するべきだった。
もう、おしまいだ。
だんだん、頭がぼんやりとして、目の前がまっしろになった。
* Re: 【創作】「オーシャンメモリー」SS ぼくのうみびらき ( No.2 )
日時: 2016/07/02(土) 18:36:07 メンテ
名前: 天外

「ひとりで危ないことをする悪い子は誰かしら」

突然、ぼくの身体が浮かび上がった。まっしろに見えたのは、太陽の光だった。
まだ、頭はぼんやりとしたままで、何が起こったのか、わからなかった。

「危ない所だったわね」

ぼくを助けてくれたのは、人魚のお姉さんだった。
お姉さんは、ぼくを浜辺に引き上げると、胸を強く押した。
飲みこんだ海水が、ぼくの口からあふれだした。

「ダメじゃない。海はキミ達にとっては、とっても危ない場所なのよ」

ぼくはなんだか恥ずかしくなって、逃げ出したくなった。
だけど、お姉さんのやわらかい腕が、ぼくを抱えていたから、できなかった。

「へえ、泳げないから、練習をねえ・・・でも、やっちゃいけないって、教えてもらわなかったの?」

すっかり忘れていた。お母さんに言われたばかりのことだ。
お姉さんが、眉をつりあげてぼくを見ていた。お母さんみたいだった。
ぼくは、さびしかったのかもしれない。だから、泳げるようになりたくて。
でも、やっぱり、海は怖い場所だ・・・。

「キミ達にはそう映るのよね。なにより危ないもの」

ここでぼくは首をかしげた。お姉さんは人魚だ。
ぼくも人魚を見るのは初めてじゃない。海開きの間だけは、人魚も町にやってくる。
器用に地面を這って、陸を歩いている姿を見たことがある。
海で暮らしている人魚のお姉さんは、海が怖くないのかな。
* Re: 【創作】「オーシャンメモリー」SS ぼくのうみびらき ( No.3 )
日時: 2016/07/02(土) 18:37:22 メンテ
名前: 天外

「キミは、海が嫌いかしら?」

お姉さんは、ぼくの身体を海へと向けた。
海は、蒼くてきらきらしていた。目を閉じれば、海風と波の音が気持ち良かった。

「海は、大切な場所よ。それは、わたし達にとっても、キミ達にとっても同じこと。
キミは、もしあのまま死んでいたら、どうなっていたと思う?」

突然つきつけられた言葉に、さっきまでぼくの身体をしめつけていた恐怖を思い出した。
身体をふるわせると、お姉さんがきれいな手で頭を撫でてくれた。
ぼくが死んだら、ぼくはどうなるんだろう。

「そう、どうなるか分からないわよね・・・
けれど、お母さんやお父さん、好きなお友達が死んじゃったら?」

ぼくは考えた。大好きな人たちがいなくなることを考えると、悲しくなった。
だから、お母さんはぼくが危ないことをしないように、しかりつけるんだろう。
お母さんにも、お父さんにも、友達にも、お姉さんにも、いなくなってほしくないと思った。
* Re: 【創作】「オーシャンメモリー」SS ぼくのうみびらき ( No.4 )
日時: 2016/07/02(土) 18:38:59 メンテ
名前: 天外

「あら・・・。ええ、いい子ね。わたしもキミのようないい子にはいなくなって欲しくないわ。
死んでも、終わりじゃないの。残された人は、キミのことを忘れない・・・けれど、

それでもいつかは終わりは来るのよ。

キミのことを思ってくれる人も、みんな死んじゃって、
全ての記憶がこの世界からなくなってしまったとき、それが、おしまい」

なんだか、ぼくは泣きそうになった。
途方もなく広く、何もない場所で、ひとりぼっちでいるような気分だった。

「わたし達の言い伝えではね、全てのものはおしまいのときに海に還るの。
さながら、降り注ぐ雨のように、川を進む流水のように、
忘れ去られた記憶は、海と一つになって、眠るのよ。
海はすべてを優しく抱き留めてくれる、大切な場所
だから、わたし達もどれだけ泳ぎが上手くても、海の奥へは行かないわ」

そう言ってお姉さんは、ぼくを抱きしめた。
お姉さんの胸は優しい海のようだった・・・。

「だから、今は怖くていい。
けれど、最後は行きつく場所だってこと、知っておいて欲しかったの。
キミが海に還るときは、優しい気持ちで、身を委ねて欲しいから」

潮風と波、海の優しい音色がぼくを包んだ。
ぼくは泣いているのだろう・・・だけど、とても優しい気持ちになれた。
このままずっとずっと、この気持ちに包まれていたいと思った。

「さあ、今日はもう疲れたでしょう。おうちにお帰り」

お姉さんの言葉で、ぼくは、はっとした。
必死でもがいていた時の疲れが、ぼくにのしかかってきた。
すぐにでも眠りたかったけど、家に帰るまではがまんしなくちゃいけない。
明日もまたここに来ようと思った。

「なら、キミさえ良ければ、明日は泳ぎを教えてあげるわ。友達に馬鹿にされないようにしなくちゃね」

お姉さんはきらきらした笑顔をぼくに向けた。
お別れのあいさつをして、立ち去る前に、海をながめた。


危険でも、怖くても、優しい場所がそこにはあった。
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